衣と身体 -art-
「日本の古来より続いている手仕事は、
見えないところまでも美しい。」
それは出来上がったものに限らず、
それらを生み出す過程や思考など
目に見えないものも含め、
常々感じています。
そして、着物もまた然りです。
一枚の布を無駄なく裁つ
機能を兼ねた美しい仕立てと、
潔さのある平面の形。
纏う際にも後ろ手に帯を結ぶ動作や
せまい歩幅の中での日常の立ち居振る舞いが
自然と身体をつくってゆきます。
また、帯は着物がずれ落ちないための
ベルトのような役割ではなく、
本来は身を守るための結界として
発生したものだと云われています。
こうした着物の在り方は、
装うこと以前に
人や布となる元のいのちにまで
目を向けることにより
生まれた形であり
着姿なのだと思いました。
だからこそ性別や年齢を問わず、
時代背景や流行も受け止めて、
千年以上もの永い間、
日本人の身体を包んできたのだと思います。
私自身、七五三の時の晴れ着以来、
着物は縁遠い存在でしたが、
めぐり巡って
いつの間にか着物に魅せられ、
着物を師として、
和裁で衣服を仕立てるようになりました。
永い年月をかけて培われた
知恵や技から学び、
想いを馳せて
現代へ続く衣のカタチを
紡いでゆきたいと思います。